マンションでステキな暮らしを楽しむ
住人十色
“光とゆらぎ”が呼応する 自分を慈しむ空間づくり
目次
ステンドグラス技法と現代マテリアルを組み合わせて、ミラーやフラワーベースなどのガラスプロダクトを制作する塩田青衣さん。故郷の熊本(南阿蘇)と東京を行き来しながら、制作活動や暮らしぶりを発信しているInstagramには、住まいへの憧れやライフスタイルへの共感の声が多数寄せられています。東京のスタイリッシュなご自宅を訪問し、美的感性が光る空間づくりや暮らし方について伺いました。
母の工房から始まったストーリー
ブランドが「かたち」を成すまで
塩田さんは、服飾を学びアパレル企業に勤務した後、25歳で独立して自身のブランドを立ち上げました。ガラスに触れるきっかけとなったのは、熊本の実家にある、ステンドグラス作家の母親・塩田鈴子さんの工房でした。
「母がステンドグラスを制作する過程で、ガラスの廃材が出ていました。それを見て『何か作れないか』と、はじめは遊び感覚でアクセサリーを作っていました」
元々インテリアが好きだった塩田さんは、興味関心が赴くままガラスを使いフラワーベースやランプシェードといった立体物を手がけるようになります。
「教会や住宅で見るステンドグラスは赤や青などカラフルなガラスを組み合わせますが、私はシルバーや黒というモノトーンが好きなんです。だから、作品はミラーと透明なガラスを使い、無色でシンプルなものが多いです」
塩田さんが、現在お住まいの東京の物件さがしでこだわったのが「コンクリート打ちっぱなし」でした。
「場所へのこだわりはありませんでしたが、シャープで洗練された打ちっぱなしの雰囲気に憧れていました。WEBサイトでこの物件の画像を見た時に『これだ』とピンときました」
①地下一階はベッドとくつろぎスペース。アンダートランクになっているので季節物などは下に収納できる
②自由な組み合わせができる「KANADEMONO」のソファー。ショップでは塩田さんのミラーも扱っている
③北欧ヴィンテージショップで購入したキャビネットや、憧れの写真家、高木由利子さんのポスターも
無機質と“ゆらぎ”が調和する
職住一体の美しい暮らし
4年前から住んでいるご自宅は、一階がダイニングキッチンで地下にベッドスペースやバススペースがあるデザイナーズマンション。
塩田さんの世界観を投影するように、コンクリートの無機質な空間に、時を重ねたアンティーク家具や観葉植物のグリーンが美しく調和。そして、塩田さんのウォールミラーやフラワーベースが、アートピースとして存在感を放っています。
入口を入ると、ワークスペースにもなっているダイニングキッチン。料理が得意な塩田さんは、ここで自炊をして食事をしたり、PC作業やガラスのカット・研磨作業をしたりしています。
「ガラスプロダクトの制作というと、大掛かりな工房が必要と思われるかもしれませんが、コンパクトなミラーならこのスペースで仕上げることができます。ステンドグラスの制作は、ご自宅のテーブルでもできるので趣味としてやっている方も多いですよ」
姿見など大型のプロダクトは熊本で制作するなど、2拠点を使い分けているのだとか。制作中にガラスの破片が飛び散る恐れがあるので、ワークスペースは裸足で歩かないように注意をしているくらいで「仕事場と食事をする場所が同じなのは便利」と笑顔で話します。
塩田さんの作品はミラーやガラスといった無機質な材料に、真円ではない左右非対称の曲線が有機的なフォルムを持たせているのが特徴です。
「ゆらぎがある形は、湖や池、水たまりから着想を得ています。自然の中で育ち、実家の近くの草原には私の作品のような形の水たまりを見ることができます」
ガラスという人工的な素材にゆらぎを表現することで、空間に調和や深みが生まれます。シンプルな作品だからこそ、緻密な線にこだわります。
「建築家がフリーハンドで設計図を書く時のように、熟練した技術に裏打ちされたゆらぎに惹かれます。単なるハンドメイドとは違う、職人の技がもたらすラフさと精密さが同居するものづくりが理想です」
①ダイニングキッチン兼ワークスペース。包装資材入れとして愛用している筒状の容器はイギリス製のゴミ箱で、表面に貼られた革の風合いを楽しんでいる
②ガラスが梱包されていた木材をPコンフックで留めて棚にアレンジ。作業で発生するガラス粉を片付ける刷毛などを置いている
20時からのリセットタイム
自分軸の空間と時間の使い方
塩田さんの私生活を垣間見るような表現がInstagramに投稿されました。
“人生で一番利回りが良かったのは、自分の機嫌を取ること”
人生を金融商品のように例える真意を尋ねると、「投資に置き換えて語るのが好きなんです」と説明してくれました。
「40代になり、どんな時間の使い方が良いかを考えた時、自分の機嫌を取って損なことはないと改めて気づきました。日々の生活の中で『ご機嫌になれる時間』を持つのは本当に大切。その時間があるから頑張れます。自分の機嫌を自分で取ることは、私にとって人生を豊かにするための美しい投資です。だからこそ、意識的にそのための時間を確保しています」
家でのご機嫌の取り方は、18時から夕食の準備をスタートして、20時までに食べ終わり、赤ワインや焼酎を片手に地下に行くこと。
「お気に入りの映画を見たり、読書をしたり、半身浴をしたり、気ままに一人時間を過ごすのが最高なんです。地下のスペースは、お酒を片手に夜の静寂を心ゆくまで楽しむための『私的サロン』のような仕様になっています」
東京にいる間は、雑音から遮断された空間で、その日の気分に合わせた音楽に身を委ね、一日を丁寧にリセットする時間を過ごし、熊本では母親や工房を手伝う妹と、濃厚な家族の時間を過ごします。そんな暮らしが、ピュアで洗練されたフォルムを持つ作品を生み出す原動力になっているそうです。
静かに過ぎる日常
作品が放つ“光と空間”
塩田さんの1日は、メゾネットタイプの地下のベッドルームに朝日が差し込む、午前5時からスタート。目覚めのコーヒーを飲み、午前中はPCを使った作業を中心に行い、簡単なランチの後、ガラスプロダクトの制作に入ります。
作品づくりで大切にしているのが、引き算の美学「Less is more」が息づく佇まいです。「光と空間をデザインする」というコンセプトで、暮らしの道具として、長く愛されるものづくりを目指します。
ものを大切にする姿勢は母親から受け継ぎました。
「母はものを大切に使い続ける人で、実家には長く使い続けている家具や道具があります。そのような環境で育ったせいか、私も木や鉄、皮の味わいが出てきたものに惹かれます。親子で好みが似ているので、お気に入りの器を交換したりもします」
東京の住まいにも、ヴィンテージ家具やアンティークショップで見つけた風合いがある小物がさり気なく配置され、スタイリッシュな空間に、どこかホッとするような温もりを添えています。
熊本の自然と、東京の都会を行き来しながら、感性を研ぎ澄ます塩田さん。自分軸で過ごすライフスタイルとともに、塩田さんの作品が、ノイズにあふれた日々の暮らしを静かに浄化してくれそうです。
デトックスウォーターで水分補給をしながら、30分から1時間は半身浴を楽しむ
心地よい空間にキャンドルと音楽は欠かせない。それぞれの部屋にスピーカーを配置
人工的につくられた香りが苦手。手仕事で丁寧に仕上げられた「サンタ・マリア・ノヴェッラ」のポプリがお気に入り
スロープブックエンドのように実用性とオブジェを兼ねたアイテムは迷わず購入
一階から地下のベッドスペースに降りる階段は自然光が入り採光が確保される
大型冷蔵庫の横のスパイスラックには自炊に欠かせない調味料やスパイスがぎっしり
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WEBサイトやインテリアショップでの販売のほかに、東京や熊本でポップアップ出展など多忙な日々を送る塩田さん。Instagramで紹介される作品を見て、増加する海外からの問い合わせに対応して、現地からも購入できるWEBサイトを立ち上げる予定です。日本のものづくりや塩田さんの感性が海を越えて、世界の生活空間に美しいアートピースを届けます。
①ミラーの揺らぎを形づくる工程。ルーター研磨中(自宅にて)
②一つ一つ仕上げたテーブルミラーたち
③熊本・南阿蘇にある山のアトリエ
④一つ一つ異なる切り株の断面をミラーで形取った新作
⑤「余白と硝子」POPUP。アートのように飾れる、暮らしの道具としてのガラスプロダクトを展示販売
MANSION DATA
間取り:1SDK
専有面積:40㎡
築年数:築10年
コメント:地下と地上の空間をフレキシブルに使ったメゾネットタイプのデザイナーズマンション。地上階で仕事に打ち込んだあとは、地下のスペースでプライベートな時間を楽しむ日々を過ごしている。
PROFILE
ガラス作家/ ガラスプロダクトデザイナー
塩田 青衣 (しおた あおい)
ステンドグラス技法をベースにした、ガラスプロダクトのブランド「doro STAINED GLASS PRODUCTS(ドロステンドグラスプロダクツ)」を展開。有機的なフォルムを表現したウォールミラーやテーブルウェア、アクセサリーを手がける。東京と熊本の2拠点生活。