貸したい
「金利のある世界」に転換して1年余り。
金利上昇傾向の中で、賃貸住宅市場の動向はどうなっていくのでしょう?
2025年の動向と展望を、不動産コンサルタント・吉崎誠二氏に解説いただきます。
大都市部だけでなく、全国主要都市で住宅賃料は上昇傾向にあり、リゾート地域などでも賃料は上昇しています。
住宅賃料は、基本的に需給のバランスで決まります。これは他のモノやサービスの価格と同じです。需要が多いあるいは供給が少ないという要因で賃料は上昇基調となります。
22年以降は物価の上昇が顕著となっている中で、ファミリータイプ、単身タイプとも賃料は過去最高水準となっています。
消費者物価指数※1における家賃(家賃+帰属家賃※2)の寄与度※3は2割を超えますので、基本的には賃料が上昇している時は、物価も上昇している時となります(賃貸住宅の更新の関係で、多少時差があります)。
現在も2%台半ばの物価上昇が続いており、2026年も同程度の物価上昇が見込まれています(日銀展望レポートによる)。
物価の上昇が続けば、日本銀行はそれを抑えるために金利上昇を検討します。
※1:消費者が購入する各種の商品・サービスの小売価格の変動を調査・産出した経済指標
※2:持ち家でも家賃を払っているものとみなして市場価格(民間借家の家賃)で評価したもの
※3:物価全体の動きに対して、どれだけ影響したかを示す数値
長らく続いたゼロ金利政策は2023年中に終わり、2024年はジワジワと政策金利が上昇した年となりました。2025年3月末時点の政策金利は0.5%ですが、年内にはあと1~2回(0.25%~0.5%)の上昇が予想されています。
政策金利の上昇は、変動金利に影響を及ぼし、概ね政策金利の上昇分だけ、変動金利(店頭金利)も上がっています。
理論上の政策金利は、「自然利子率+予想インフレ率」で算出されます。
【図1:自然利子率と実質金利の相関関係】
【図2:日本の実質金利と名目金利の推移(日次)】
実質金利の低下、低く抑えられた政策金利、つまり金融緩和政策は続いているということになります。そのことを裏づけるように、賃貸住宅投資は、なお活発に行われています。
投資家の期待利回り(=キャップレート※4)は、東京(城南エリア)では3%半ば程度で推移しており、過去25年間で最も低いことからも、そのことはわかります。
賃料上昇傾向と実質金利の低下、これらが相まって賃貸住宅投資がなお活発に行われているわけです。増える賃貸住宅ですが、需要はあるのでしょうか?
※4:不動産投資家がどれくらいの利回りを期待しているかを集計して算出したもの
前出の通り、大都市圏および全国主要都市の賃料上昇の傾向は顕著です。その背景には、これまで通り若年層人口の流入が継続することや、新築中古とも区分マンション価格が上昇していることによる買い控えの増加などで賃貸需要が旺盛となっていることが挙げられます。
持ち家比率は、過去40年を見ても、全国では概ね6割程度、大都市圏では5割を超える程度です。単独世帯の賃貸住宅(民営・公営)に住む割合は大都市部で7割を超えています。
国立社会保障・人口問題研究所の将来世帯推計によれば、2050年には多くの都道府県で単独世帯は全体の4割を超え、東京都は5割を超えます。これら2つのことから、少なくとも大都市圏での賃貸住宅需要は、今後も旺盛な状況が続くと言えそうです。
<執筆者>(社)住宅・不動産総合研究所 理事長不動産エコノミスト吉崎誠二氏
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