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2026年度の賃貸住宅市場の見通し~家賃上昇は続くのか~

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目次

執筆:(社)住宅・不動産総合研究所 理事長
不動産エコノミスト
吉崎誠二氏

物価上昇が続く中で家賃の上昇が顕著となってきました。

この先の賃貸住宅市場と家賃の動向はどうなるのでしょう?

家賃上昇の流れは広まる傾向に

大都市部だけでなく、全国主要都市で住宅賃料は上昇傾向にあります。

マンション賃料インデックス(公表三井住友トラスト基礎研究所、アットホーム社共同開発)の最新データ(2026年3月23日公表)によると、2025年第4四半期の東京23区の賃料は前年同期比で+5.3%となり、13四半期連続で過去最高値を更新。タイプ別では、シングル+5.5%、コンパクト+4.0%、ファミリー+12.4%と全タイプで賃料上昇が継続しています。

こうした傾向はほとんどの大都市で見られ、東京23区だけでなく、大阪市や福岡市では高い上昇率となっています。同データの首都圏を細かくみれば、東京23区の家賃上昇は周辺部にも広がり、東京都下、横浜・川崎、千葉西部では、同じくらいの上昇幅となっています。

その一方で、築年数が古い物件、駅から遠い物件、設備が旧式化した物件は競争力を失っており、空室期間が長期化し、家賃の上昇は限定的です。

※出典:アットホーム株式会社・三井住友トラスト基礎研究所共同開発「マンション賃料インデックス」(2026年3月23日公表資料)より

住宅価格の高騰に伴い、 ファミリー向け賃貸住宅は需要増

ファミリータイプの上昇幅が特に大きい背景には、分譲マンション価格の高騰によって賃貸に滞留する世帯が増加し、需給がひっ迫していることが挙げられます。

特に大都市圏では、賃貸用物件は単身向け(シングル)は多くありますが、ファミリー向けの賃貸物件は少なく、分譲マンションの賃貸物件が主流となっています。需給バランスという要因に加えて、分譲マンションを収益物件として購入する投資家が増えていることもマンション価格の上昇に拍車をかけていると推測できます。

※出典:株式会社不動産研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年2月」

貸し手と借り手の意識変化で、 家賃は“粘着化”から脱皮

また、賃貸住宅系のJREIT銘柄のIR資料をみれば、普通賃貸借契約における更新時の家賃値上げ割合も増えています。住宅賃料には「粘着性」(=変動しにくい性質)があり、家賃はなかなか上げにくいとされてきましたが、近年はその常識が崩れ始めています。

 

以前はオーナー側にも値上げへの心理的な抵抗感がありましたが、近年は多少の賃料上昇でも次の入居者がすぐ決まるという成功体験が積み重なり、「値上げしても問題ない」という意識へと変わりつつあります。このオーナーサイドの意識の変化は家賃上昇の大きな要因と言えます。

今後の家賃動向は 世帯収入&実質購買力を注視

 今後の家賃動向を見極める要因として、世帯収入の動向があります。家賃が上昇する一方で、家計の実質的な購買力はどうなっているのでしょうか。

 厚生労働省が2026年3月9日に発表した「毎月勤労統計調査2026年1月分」によると、実質賃金指数(現金給与総額:名目賃金をベースにインフレ率を加味したもの)は前年比+1.4%と、2か月連続のプラスとなりました。名目賃金は上昇しているものの物価上昇の方が大きかった状況が続いていましたが、物価上昇が収まり実質賃金は上昇しています。実質賃金の上昇は家賃上昇可能性をもたらします。しかし、2026年3月末時点ではまだ公表されていませんが、2月、3月分も実質賃金のプラスが続く可能性が高い一方で、原油価格の高騰により4月以降に再びマイナスに転化する可能性も指摘されています。

 また、名目賃金の伸び(前年比+2%~3%)と、家賃の上昇率(例えば東京23区で+5%超)を比較すると、その乖離は明らかです。これは冒頭で述べた多くの都市で起こっている状況です。エリアによっては手取り収入の4割近くを家賃が占めるケースも出てきています。このように「住居費として払える家賃の限界」に近づいていることも現実でしょう。

※出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年1月分結果速報」

資産価値の維持や競争力向上に リフォーム&リノベーションも

前述の賃貸住宅系JREIT銘柄のIR資料によると、更新時賃料より入替時賃料の家賃上昇幅が大きくなっています。加えて、入替時賃料(=新規賃料)については、原状回復住戸とリノベーション済み住戸では、圧倒的にリノベーション済み住戸の方が上昇幅は大きくなっています。

 

現行のような賃料上昇基調にある場合は、リフォーム・リノベーション工事は有効な賃料UPの手段となりえます。いうまでもなく、一定のリフォームコストをかけることで、経年劣化の影響を抑えつつ物件の魅力を向上させることができ、競争力を中長期的に保ちやすくなります。また、設備の老朽化による故障に伴う入居者からのクレームが減少するなど、管理負担が軽減される可能性もあります。

 

リフォーム・リノベーションの工事費は年々上昇しており、しばらくの間は下がる可能性は低いと思われます。「いつか、そのうち」と先送りにしていると、「早くしておけばよかった」となりかねません。もちろん、今後の賃貸住宅需要の見通しや、個々の物件状態、工事による費用対効果によって判断は左右されます。将来設計や資金計画などを含めて、まずは信頼できるプロに相談することをお勧めします。

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