ライフスタイル特集
ヨーロッパをはじめとする海外で約7年間を過ごしたのち、インテリアコーディネーターの資格を取得。ご縁あってフローリストの道を歩み始めましたが、まさか自分が押し花の世界に魅了され、人生を捧げることになるとは想像もしていませんでした。ある日、「ウェディングブーケを押し花に残せますか?」というご依頼をいただいたことをきっかけに、押し花の制作を始めるようになりました。私は、押し花は花々の美しい姿を残すだけでなく、その可憐さを引き立てる額に収めるなどして、インテリアの一部として楽しむ「アート」であるととらえています。皆さまから寄せられる温かな言葉に励まされながら、25年以上、押し花と共に歩んできました。人生の中には、プロポーズや記念日など特別な花束を贈られることがあります。四つ葉のクローバーを見つけた時に、手元に残しておきたくなるように、花束をもらった時の「幸せな気持ち」を残したいと思っています。押し花アートを飾ることで、空間がやさしさとぬくもりに満たされます。そんな押し花アートの魅力を、一人でも多くの方に届けていけたらと願っています。
「ぶるーむ」では、ウェディングブーケやプロポーズの際に贈られた特別な花々を、世界に一つだけの押し花アートとして生まれ変わらせています。熟練の職人が、植物のもつ生命を感じながら丁寧にデザインし、花を傷つけることのないよう、最小単位にまで繊細に分解して乾燥。花や緑の自然の動きや色味を生かし、花が生き生きと見えるように花の向きや配置、立体感や余白のバランスを考えます。押し花を引き立てるために、ヨーロッパの植物画技法に着想を得た「マウント装飾」を取り入れ、アートとしての完成度を高めています。さらに、押し花の美しい世界と癒しの感覚を多くの方にお届けしたいという思いから、花材や植物の押し花素材をご用意しています。こちらも職人が手作業で加工し、技術を要する花や植物、四季折々の希少な花もラインナップしています。額に入れて飾るだけではなく、ハンドメイドのスマホケースやアクセサリーにするなど、様々なアレンジが可能。押し花のある暮らしを、自由な発想で楽しんでいただければと思います。
① 花の命を封じるのではなく、立体的に額や器の中で美しく生き続けるように表現するのが「ぶるーむ」流。② 秋の草花や「しめじ」も押し花にしてインテリアに。季節感や表現の幅が広がります。
押し花は時間をかけてゆっくりと色があせていきます。退色を防ぐために真空状態にする手法もありますが、私たちは額の中で「生き続けてほしい」と思っているので、あくまで自然な手法でお作りしています。表情を深めていく変化こそが押し花の魅力だからです。人が年を重ねるように、花もまた空間のなかで時を過ごし、静かに姿を変えていく。同じ空間と時の流れの中で、人生に寄り添ってくれるようです。時間の経過しか醸し出すことができない、独特の風合いを慈しみ、味わうことができるのが押し花の醍醐味です。お気に入りの押し花を玄関やリビング、ベッドルームに飾ってみてください。部屋の空気がやさしく変わり、心がふと癒される瞬間が生まれます。押し花を見るたびに、贈られた日の記憶やそのときの想いが蘇る。そんなストーリー性のあるインテリアには、不思議な力があります。花が映えるように自然と空間を整えたくなったり、自分にとって大切なものに気づいたり。押し花は、自分らしく暮らすヒントを教えてくれるのです。
押し花はご自宅でも気軽に楽しめます。「こう作らなくてはいけない」という決まりはありません。花をそのまま押してもよしですし、花びらを並べて絵を描くようにデザインしても素敵です。感性のままに表現することで、あなただけの作品が生まれます。回数を重ねるほどコツがわかり、自分らしい表現ができるようになります。初心者には、マーガレットやかすみ草などがおすすめ。ドライフラワーに使われる「水分が抜けやすい花」は押し花に適しています。ミモザや紫陽花などの季節の花や、ハーブ類の葉や枝も扱いやすい素材です。花びらの多い花や厚みのある花は、分解して乾燥されるときれいに仕上がります。花には花言葉があります。例えば、開業祝いや門出の贈り物に選ばれる極楽鳥花(ストレリチア)の花言葉は「輝かしい未来」。その「想い」を込めて手作りの押し花を額装したり、メッセージカードにしたりして贈ることもできます。押し花を使ったアイデアは無限に広がっていきます。
① エディブルフラワーを押し花にしてケーキやお菓子をデコレーション。世界に一つの可憐で華やかな演出に♪② 子供の手形足形に押し花を添えてファーストアートに。自分で楽しむのも、贈り物にもおすすめ。
押し花にしたい花を切り離します。マーガレットのようなキク科の花は、花のまま押し花にすることができます。茎や葉も一緒に押し花にすることができます。Point 茎や厚みがある部分はカッターで傷をつけると水分が抜けやすくなります。
花びらが多い花は、花びら1枚1枚を手でそっと解体します。根気が必要な作業ですが完成形を想像しながら美しく仕上げましょう。Point 花びらの厚みがある部分はハサミで切り取ったり、付け根の部分に切り込みをいれたりするとシワになるのを防げます。
押し花用の乾燥シートやティッシュペーパーの上に花を並べ、上から乾燥シートやティッシュペーパーを重ねます。保存用の袋(ジップロックなど)に入れて上から約5kg(広辞苑、お米の袋など)の重しをします。Point 花を並べる時はスペースを空けて、花と花が触れないようにします。
だいたい一週間ほどで完成します。そっとティッシュペーパーをはがして、しっかり乾燥しているか確認します。花びらがピンとなっていたら乾燥できています。Point 厚みによって乾燥状態がちがうので、一つひとつ確認しましょう。
完成した押し花をコーディネートします。今回はブーケをイメージしたカードに花や葉を配置します。どんなデザインにするか楽しんで♪Point 押し花は繊細なので、手で触らずにピンセットを使います。使わない押し花は密封できる袋で保存。
配置が決まったら接着剤で固定します。花や花弁の全体に接着剤をつけるのではなく、固定したいポイントにつけるだけで大丈夫。ふんわりと立体的に仕上げます。Point カードはそのままでも良いですし、ラミネート加工をしてもOK.
ヨーロッパの暮らしの中で、特に魅了されたのはパリの街並みでした。ファッション、カフェのインテリア、ショーウィンドウのディスプレイなど、目に映るものすべてが美しく、私の感性の原点になっています。「ぶるーむ」の押し花アートには、その時に培った美意識や、インテリアコーディネーターやフローリストの知識や経験が詰まっています。押し花アートは「その人らしさ」が表現できる世界。私は、男性も女性も全ての人が「自分らしく」生きてほしいと願っています。自立した生活をおくるために、押し花を仕事にできるプロ養成講座を開設。卒業後は「ぶるーむ」の専属デザイナーとして活躍したり、フリーランスとして作品を販売したりと、可能性はさまざまです。これからも、多くの方に押し花の魅力を伝えながら、心にそっと寄り添うようなアートを届けていきたいと思っています。
① 30年近く押し花とともに歩んできた飯澤氏。暮らしの中に豊かさをもたらす押し花アートを生み出し続ける。② 特別な日に贈りたい、ぶるーむの最高級押し花アートシリーズ「REGALO(レガロ)」の1作品③ 還暦のお祝いの花束を残されたオーダーメイド押し花アート作品④ オーダーメイド押し花アートの製作時の様子⑤ 日常のインテリアやギフトにおすすめの押し花アートシリーズ「rêve (レーヴ)」の1作品⑥ ぶるーむらしい奥行を感じるデザイン押し花アート(保存額装前)の様子
株式会社ぶるーむ 代表取締役プレスフラワーアーティストプレストフラワーアートプロデュース協会 理事長
飯澤 早苗さん(いいざわ さなえ)
株式会社ぶるーむ代表取締役。1997年に株式会社ぶるーむを設立し、翌年より「ぶるーむ・押し花スクール」を開講。海外での暮らしやインテリアコーディネーターとしての経験をもとに、独自の押し花アートの世界観を築き、後進の育成にも力を注いでいる。