マンションでステキな暮らしを楽しむ
住人十色
“今”にアジャストした収納と住空間づくり
目次
生活を重視し、ラク優先の実践的な片付け術を得意とする、整理収納コンサルタント・本多さおりさん。6年前に中古マンションをフルリノベーションし、夫と小学生の子ども2人と4人暮らし。「今この時」にフォーカスし、その時々に合わせた最適な住空間をつくる本多さんのスタイルを伺いました。
過去に経験した“便利”を
リノベーションで再現
子どもが遊び、地域の人々の憩いの場所にもなっている公園の前に、本多さんの住まいはあります。「緑が見えること」と「フルリノベーションができること」を条件に物件を探しましたが、そうした物件はなかなか見つかりませんでした。
「内装や設備をすべて取り払い、スケルトンにして間取りから自由にリノベーションしたかったのですが、物件探しは長期戦でした。この家は65㎡と4人暮らしにはややコンパクトですが、緑の眺望と広いルーフバルコニーが決め手となりました」
整理収納コンサルタントとして何百軒もの住まいを見てきた本多さん。間取りにもこだわりがあったのかと思いきや、主に設計士に伝えたのは「家事動線を一直線にすること」と「個室は寝室だけでよい」ということだけだったそうです。
「結婚後に暮らした2つの家で感じた良い点・悪い点を雑談のように話したところ、提案されたのが今の間取りでした。家の中央に浴室やお手洗いがあるという斬新な設計で、一目で気に入りました」
室内干し用のバーを設置したり、キッチン上に吊し棚を設けたりと、快適な空間づくりには、本多さんの経験と工夫が随所に生かされています。
①子どもが小さいうちは個室を使わない家庭が多く、個室を設けず必要な時に区切るスタイル。中央に浴室やお手洗いをまとめ、回遊できる間取り。
②手前から洗面、洗濯機、キッチンが一直線につながる家事動線を実現。本多さんが過ごす時間が多い場所に心地よさと効率を両立。
③広々とした空間で家族が思い思いの時間を過ごすことができる。ソファの後方を布でゆるやかに仕切り、お互いの時間を尊重。
実は“面倒くさがり屋”
ラクを求める気持ちが工夫を生む
「どうしたらラクになるか」をテーマに、トライ&エラーを重ねてきたという本多さん。その原点は実家で過ごしていた小学生時代にあります。
「自分の部屋で何かを食べることがあったので、キッチンまでフォークやナイフをとりにいくのが面倒で。『わざわざ』や『立ち上がって』という行為を省きたいと思ったんです。自分を変えるより環境を変える。究極の“面倒くさがり”はその頃から健在でした(笑)」
ラクに暮らすための工夫を続けた結果、整理収納コンサルタントとして活躍するようになった本多さん。プロの目から見てると、マンションは「ものの配置を戦略的に考えるほど効率を実感できる住まい」だといいます。
「私もそうですが、マンションを選ぶ方は効率を求めている方が多いのではないでしょうか。上下の移動がなく、寝室となる個室や広いリビングダイニング、十分な収納があります。ワンフロアという特性を活かせば、効率的な動線や収納を実現しやすいと思います」
①カーテンの代わりに障子を使用し、柔らかな光に包まれる空間に。破れにくい障子紙で耐久性も確保。
②畳に布団を敷いて寝るスタイル。引き戸で自由に空間を仕切り、夜に読む本は手の届く位置にまとめている。
年末は“棚卸し”のチャンス
持ち物の量を知るだけでも効果あり
「使う場所に収納場所を寄せる」――が本多さんの基本の考え方。
部屋干しのご家庭は、ハンガーを洗面所に戻さず、干す場所に置くだけで家事がラクになります。「ハンガーを置くスペースなんてない」と思っても、実は使っていない工具や思い出の品が場所を占めていることも。それらを移動するだけで、収納スペースは意外と生まれます。
年末の片付けに向けたアドバイスは、「まず持ち物の中身と量を知ること」。
「本でも洋服でも、すべて出してどれくらいあるかを見るだけでいいんです。片付けようと構えるとハードルが上がるので、そのまま戻してしまっても構いません。本を集めてジャンルごとに分けるだけで、自分の興味や好みを再確認できます」
買った当時は大切に思っていても、時を経て考え方が変わっていることに気づくこともあります。また、持ち物を把握することで、無駄な買い物を防ぐこともできます。
「私は“わからない状態”が嫌いなんです。世の中の多くはわからないことばかりですが、せめて自分の身の回りだけは理解しておきたい。だから情報やモノをふるいにかけ、“今の自分に必要なもの”をセレクトしている感覚です」
“今”の心地よさを軸に
暮らしをアップデート
子どもの成長や生活習慣の変化に合わせて、暮らしも日々変わっています。
「子どもが小学生になって、暗記カードやはんこの出番が増えました。以前は遠くに置いていましたが、今はすぐに手が届く場所に移動。行動が変わると、使うものの優先度が変わることはよくあります」
不便を感じたら、変化に合わせて置き場所をアップデート。収納場所だけではなく、間取りも変化に合わせ柔軟に見直すことが大切と語ります。
「ここに住んだのは子どもたちが小さい時でした。どこにいても目が届く間取りがベストでしたが、子どもの成長や私の仕事が増えてくると、プライベート空間が欲しくなることもあります。そのため、今はリフォームや住み替えも視野に入れ始めました 」
無理に環境に合わせるのではなく、「今の心地よさ」に合わせて環境を変える。
「整理収納サービスをご利用してくださった方の多くが『もやもやしていた気持ちがスッキリした』『家族に優しくなれた』と心理状態の変化を語ります。心地よい空間で過ごすことは、幸せに暮らすことにつながると思います」
洗濯物が干せるバーを端から端まで設置。木製にすることで和の雰囲気と調和。植物をハンギングする場所としても便利。
引き出しの中も効率を考えた収納に。手前に利用頻度が高い物、奥にストックを置くとストレスがない。
キッチン横のスペースは作業台として活用。竹かごにプリント類を一時ストックし、タイミングを見て分類作業をする。
片付いた家=物がない家ではない。お気に入りの小物がところどころに配置され温もりを感じる。グリーンは手入れが簡単なタイプをチョイス。
引き戸で仕切れば寝室になる。家族がインフルエンザなどの感染症になった時に、隔離スペースとしても活用。
水まわりからベランダまで一直線の動線。壁面吊り棚でスッキリした印象に。物の出入りが多いキッチンの収納は引き出しが便利。
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結婚後に住んだ築40年・約40㎡のマンションでの暮らしを綴ったブログ「片付けたくなる部屋づくり」を開設。整理収納コンサルタント資格を取得し、個人宅向けの整理収納サービスを開始し、5年間で200軒以上を訪問。同年発刊した書籍「片付けたくなる部屋づくり」は10万部を突破。2019年に中古マンションを購入し、「家族がのびのびできて家事がしやすい」をテーマにフルリノベーション。家族それぞれの暮らしやモノに合わせた提案が支持を集めている。
① 今年も開催予定のフリマイベント(@senkiya)
② 部活のように整理収納を考える「暮らし快適片付け部」の様子。
③ コロナ禍から始めた「オンライン収納相談室」。
④ 北欧、暮らしの道具店さんと作った「洗えるペーパー収納ケース」。
⑤ 暮らしは実験。思い付きでダイニングに小さなデスクを作ったときの様子。
⑥ 新たに液晶テレビを迎えるためシュミレーションしている様子。
MANSION DATA
間取り:変則1LDK
専有面積:64.64㎡
築年数:2006年11月(築20年)
コメント:家族と穏やかに過ごすこと、家事が無理なくまわることを大切にした本多さんの住まい。
柔らかな光に包まれた明るい空間で、家族との団らんが育まれている。
PROFILE
生活重視ラク優先をモットーに、日々の暮らしをより心地よくする方法を提案する整理収納コンサルタント。著
書に「片付けたくなる部屋づくり」「あなたを動かす 片付けの切り札」など。VoicyやYouTubeでも発信中。