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冬はビタミンDをもっと摂ろう

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骨の健康だけでなく免疫に深く関わるなど「健康の要」とも言えるビタミンD。にもかかわらず、現代人の多くは不足しています。日照時間が減り体内で作りにくくなる秋・冬は、より意識してビタミンDを摂る必要があります。ビタミンDの健康への重要性や上手な摂り方をご紹介します。

ビタミンDは健康の土台をつくる〝スーパービタミン〟 

ビタミンDは健康にとって必要不可欠な脂溶性ビタミンの一つです。「骨を強くするビタミン」として知られていますが、働きはそれだけではありません。

「ビタミンDの受け皿となる受容体は全身にあり、動脈硬化、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなどあらゆる生活習慣病の予防に貢献します」と、満尾クリニック院長の満尾正先生は話します。他にも筋力や運動能力との関連、うつ病や認知症など脳の健康との関連が指摘されています。また、花粉症などアレルギー疾患の予防・改善、視力や歯の健康まで、ビタミンDは全身の健康と密接に関わっています。

中でも注目されるのが、体内の慢性炎症を防ぎ、免疫をコントロールする力です。免疫とは、体内に侵入してきた異物から体を守る防御システムです。ビタミンDは全身の細胞に影響を与えて免疫機能をサポートする重要な調整役。いわば、「健康の土台をつくるスーパービタミン」ともいえるでしょう。

免疫機能の維持は、感染症を防ぐことにもつながります。実際に、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの感染症リスクとの関連を示す研究報告も世界中から上がってきており、その重要性が注目されています。ビタミンD量を十分に保つことは、冬の感染症予防にも役立つでしょう。

日本人の多くはビタミンDが足りていない

健康の基礎となる重要なビタミンでありながら、ビタミンDはほとんどの人で不足しています。

そもそもビタミンDを補充するルートは、食品やサプリメントから摂取するか、日光の紫外線を浴びて皮膚で作られるかの2つです。紫外線がなければビタミンDを生成することができないため、人間の生活様式が屋外から屋内へと変化し、紫外線を避けるような生活になったこと自体、不足の大きな要因だと考えられています。これは現代人の必然とも言える結果かもしれません。加えて、年齢を重ねると体内で合成される量が減少しますし、美容面を意識して紫外線を過剰にカットすれば、若い人でも作りにくくなってしまいます。特に出産する年代の女性のビタミンD不足は、生まれてくる子どもの健康にも直結します。ビタミンDを十分に摂取することは、世代を超えて全ての現代人にとって大きな課題なのです。

■ ビタミンDが作られる2つのルート

血液中のビタミンD濃度がどのくらいであれば正常なのかは諸説ありますが、欧米の研究機関や論文では、25(OH)Dという活性型ビタミンDに代謝される前の前駆体の濃度を用いて次のように判定しています。

「日本でも30ng/mLが目安と考えて差し支えないでしょう。当院の初診時検査で血中ビタミンD濃度を測定すると、約80%の人が30ng/mL未満の不足、欠乏状態にあり、30ng/mL以上の方は20%程度しかいませんでした」(満男先生)。

健康を意識してバランスよく食べていると思っている人でも、不足していることが多いのです。日本では骨粗鬆症の疑いでビタミンD欠乏かどうかを調べる検査が保険適応になっていますので、気になる人は一度、調べてもらうと良いでしょう。

秋から冬はビタミンDを生成しにくくなる

不足しがちなビタミンDですが、秋から冬の時期は日照時間が短くなるため、特に生成されにくく、1年で最も少なくなる時期となります。

「緯度が高く冬の日照時間が短い地域に住んでいる人は、緯度が低い地域よりも血中ビタミンD濃度が低いこともわかっています。また、食べ物からのビタミンDの摂取量が同じでも、夏と冬で血液中のビタミンD濃度が異なることを示した研究もあります」(満尾先生)

ビタミンDは皮膚に紫外線が当たることによって作られますので、血中濃度は日照時間に比例して変化することを覚えておきましょう。日照時間が減る時期は、より意識して積極的に補充する必要があります。

日光・魚・サプリメントでビタミンDを増やす

体内でのビタミンDの生成量を増やす方法は、適度に日光を浴びることと、食品から補うことです。食品の場合、きのこなどに含まれている植物由来のD2と、鮭や青魚などに多く含まれている動物由来のD3があります。 こうした食品を積極的に取り入れ、魚をあまり食べないという人は、もっと魚を食べるようにしましょう。乳製品にもわずかにビタミンDが含まれています。最近はビタミンDを強化した食品も増えてきましたので、こうした食品を利用するのも一つの方法です。ただし、製品によって含まれているビタミンDの量が違いますので、よく表示を確認して選ぶことが大切です。

必要な量については個人差もありますが、1日に摂取したいビタミンD量は「25〜50μg」が目安です。

「魚を食べるなど食生活の改善も重要ですが、それだけで達成は難しいため、血中濃度が低い場合には、ビタミンD3のサプリメントで補充することをおすすめします」と満尾先生は話します。

■ビタミンDを多く含む主な食品

冬こそビタミンD強化を!

ビタミンDの生成量は、天気、大気汚染の状態、緯度、季節、時間、服装(肌の露出度)によっても変動します。加齢や紫外線に対する感受性など個人差も影響しますので、単純に紫外線をたくさん浴びればよいというわけではありません。浴びすぎれば皮膚にとって弊害もありますので、「弊害は抑えながら適度に紫外線を浴びる」というバランスが大切になります。

ちなみに、国立環境研究センターのウェブサイト「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」※1 では国内12ヵ所の地域別に、ビタミンDを10μg生成するために必要な紫外線照射時間を公開しています。こうした情報もうまく利用しながら、紫外線とうまく付き合っていきましょう。

例えば「神奈川県横浜市」で調べてみると、平均的な肌タイプの人が12月上旬に長袖長ズボンで顔と手を露出(肌を600㎠露出)した状態だと45分で10μg生成されるという目安量になります。同じ条件でも6月上旬だと11分ですから、冬場は積極的に日光を浴びないとビタミンDが生成されにくいことがわかります。

少なくとも、日照時間が減る秋・冬は「なるべく外に出て日光を浴びる」「この時期だけでもサプリメントを利用する」など、ビタミンDを増やす対策を強化することをおすすめします。

■国立環境研究所「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」

PROFILE

満尾先生

教えてくださったのはこの方!

満尾クリニック院長

満尾 正 (みつおただし)

北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門クリニックを開設。米国アンチエイジング学会認定医(日本人初)、米国先端医療学会キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。主な著書に『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)、『名医の食卓』(アチーブメント出版)など。