東急コミュニティー

東急コミュニティー

ヘルスケア

今から糖尿病対策を! 長続きする「ゆるい糖質制限」

暮らしの窓WEB > お役立ち情報 > ヘルスケア > 長続きする「ゆるい糖質制限」

糖尿病と糖尿病予備群を合わせて約 2000 万人、5〜6 人に 1 人が当てはまる国民病と言われます。今は糖尿病ではない人も、放っておくと過剰になりがちな糖質を控えめにコントロールする術を身につけることが大切です。無理なく長続きできる糖質制限の方法をお聞きしました。

現代の食生活は放っておけば糖質を摂り過ぎる

「現代の食生活は簡単に糖質摂り過ぎになりやすい」と、いちかわクリニック院長の市川壮一郎先生は指摘します。私たちが主食としているご飯、パン、麺類などの炭水化物(糖質+食物繊維)は、ほとんどが糖質ですし、砂糖がたっぷり含まれたスイーツや甘い飲料、甘くないおかずやアルコールなどにも糖質が含まれています。私たちは普段から血糖値が上がりやすい糖質に囲まれ、それがいつも簡単に食べられる状況にあるのです。
食べ物を食べて血糖値(血液中のブドウ糖を示す値)が上がると、上昇を抑えようと膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンの作用でブドウ糖は細胞に取り込まれ、体内でグリコーゲンに変えられ、エネルギー源として使われます。このとき余ったブドウ糖は中性脂肪に変えられ、体に蓄えられます。運動や活動のエネルギーを消費するときには、まずグリコーゲンから使われ、これが尽きると中性脂肪が燃やされるので、糖質を過剰に摂り続けていればグリコーゲンが作り続けられ、中性脂肪はどんどん増えていきます。こうして太っていくのです。

血糖値の乱高下が病気を招く

食後 1 時間〜1 時間半くらいで血糖値の上昇はピークに達します。大きく血糖値が上がると、それを下げるためにインスリンを大量に分泌し、2〜3 時間後、今後は血糖値が急降下してしまいます(この変動は「血糖値スパイク」と呼ばれています)。

この血糖値の乱高下が、だるさや疲労感、眠気、吐き気など不快な症状を引き起こします。こうした状態が続けば、なんとなく不調なだけでは済まず、やがてインスリンが枯渇してきます。血糖値のコントロールがうまくできなくなり、糖尿病になる可能性が高まります。

さらに、血糖値の乱高下は血管にダメージを与えて動脈硬化も促進します。血管にかかわる生活習慣病は関連し合っていますので、心筋梗塞や脳卒中など重大な血管病が起きるリスクも跳ね上がります。

「糖質を摂ると、脳でドーパミンと呼ばれる快楽物質が分泌され、『また欲しい』と欲するようになります。大昔は糖質が簡単には摂れなかったため、少しでも見つけたら食べられるように体のシステムが進化したのでしょう」と市川先生は話します。

もともと体に備えられたメカニズムが、飽食になった現代ではミスマッチとなっているのです。糖質摂り過ぎの生活を続けていると、そのこと自体で太るだけではなく、本来備わっているはずの食欲抑制システムもうまく働かなくなり、ますます糖質を食べて太る悪循環に陥ってしまいます。

食後血糖値を意識しよう

血糖値は空腹時には低く、食事をすれば上がります。ですから健康診断で測る「空腹時血糖値」よりも「食後血糖値」を知ることが大切です。
「糖尿病へと進む最初の兆候は食後高血糖なのですが、『食後は血糖値が高いのに空腹時血糖値は正常』という状態がしばらく続きます。つまり、健康診断で血糖値の異常が見つかるというのは、食後高血糖を放っておいた結果なのです」
知らず知らずのうちに体の中で高血糖が進行してしまう前に、食後の血糖値が高くないかを意識しましょう。食事から 2〜3 時間後にだるさや疲労感、眠気、吐き気などの症状を自覚している人は要注意です。また、血糖値が 160〜180mg/dl を超えるくらいになると尿に糖が出る場合が多いので、市販の「尿糖検査薬」で調べることもできます。

■血糖値に関連する指標

糖質制限の目安は「糖質量 1 日 130g 以下」

血糖値の変動をできるだけ緩やかに抑えるために勧められるのが糖質制限です。それも、いきなり「糖質ゼロ」にするような極端な方法は続きませんので、完全に断つ必要はありません。無理なく続けられる「ゆるい糖質制限」で上手に糖質と付き合いましょう。
日本人の糖質摂取量は 1 日あたり平均 270〜300g と言われていますが、一般に糖質制限をする場合は 1 日 130g 以下が目安となります。ただし、日中の活動量や年齢、性別など個人によって適切な糖質量は違います。自分のライフスタイルの中で、摂取しても健康を維持できる適切な糖質量を見つけていく必要があります。
目安として、ごはん茶碗 1 杯(150g)に 55g の糖質が含まれています。1 日 3 回食べれば165g。おかずや調味料などにも糖質は含まれているので、通常の食生活をしていれば 1 日200g は簡単に超えます。主食以外にも意外と多くの糖質が含まれていますので、糖質制限をする場合には注意しましょう。

■注意したい「隠れ糖質」
芋・根菜:分類上は野菜でも成分は糖質が主。芋やトウモロコシを主食とする国もある
果物:甘い果物には果糖がたっぷり
缶コーヒー・清涼飲料:「微糖」は表示であり実際には糖質が多く含まれている。液体の糖は
吸収がよく血糖値が上がりやすい
練り物:つなぎに澱粉が多く使われている
ソース・ケチャップ:甘みのある調味料にも糖質が多く含まれている

「ゆるい糖質制限」の方法

毎日食べる主食の量を調整するシンプルな糖質制限の方法をご紹介します。

 

① 朝食は野菜をたっぷり

生野菜、温野菜をたっぷり食べましょう。その日の気分やサラダの中身によってドレッシングは色々なバリエーションで飽きないようにし、物足りない場合は、卵、チキン、ソーセージなどを加えてもよいでしょう。野菜に含まれる食物繊維の働きで血糖値の上昇が抑えられ、最初にとった食事の効果が次の食事まで持続する「セカンドミール効果」も期待できます。
トーストのみ、お茶漬けのみなど炭水化物だけを単独でとる朝食は血糖値が上がりやすいメニューです。特に寝ている間は空腹状態で血糖値が下がっているうえ、長時間空いてから摂る糖質はより血糖値を上げやすいことがわかっています。食事内容を一気に変えるのが難しければ、「6 枚切りのトーストを 8 枚切りにして野菜を加える」など、徐々に糖質を減らしていきましょう。


② 昼食後には体を動かす
昼食は自由に食べて構いません。ただし、かけうどんやもりそば、おにぎりなど炭水化物のみのメニューはできるだけ避け、たんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維など栄養バランスを考えましょう。また、食後血糖値が上がりきる前に体を動かすことによってその上昇を抑えられますので、昼食後 15〜30 分後には動くことを意識しましょう。ハードな運動ではなく、立って食器を洗う、歩いて職場へ戻るなどで十分です。


③ 夕食は少しずつ炭水化物を減らす
夕食はご飯(主食)の量を徐々に減らし、最終的には茶碗半分くらいを目標にしましょう。
おかずの量を増やさないとお腹がいっぱいになりませんが、おかずの味が濃いとご飯も食べたくなってしまいますので、おかずの味付けを薄くしていくことも心がけましょう。
「おすすめは鍋物(きりたんぽ以外)です。締めの炭水化物を避ければ肉、魚、野菜などの具はたっぷり食べられます。また、焼き鳥、刺身などをつまみに適量のアルコールを楽しむのも、主食の量を減らしやすい方法だと思います」

気をつけたい失敗しがちなポイント

主食を調整する糖質制限はシンプルだからこそ、乱暴にやってしまうと失敗することもあります。以下のようなポイントに注意しましょう。

 

・単純に主食だけ抜けばよいわけではない

→食事量が減ってお腹が空き、我慢できなくなって失敗する例が多いです。

 

・食物繊維の不足に気をつける
→ご飯には食物繊維も含まれているため減らすと便秘になってしまう人も。野菜や海藻を意識的に増やし、食物繊維を補う必要があります。

 

・水分を意識的に補充する
→糖質制限を始めると、グリコーゲンとインスリンの作用で水分が体の外に排出されやすくなりますので、意識的に水分を補充しないとだるさを感じやすくなります。開始当初は体重が1〜2kg 減っても、脂肪ではなく水分の影響だということも知っておくとよいでしょう。

・単純に主食だけ抜けばよいわけではない

「ゆるく」「継続」が最も大切

食生活の改善は一時の流行で終わるのではなく、「継続」することが最も重要です。だからこそ、自分のライフスタイルをなるべく崩さずに自分に合った糖質量を知り、「ゆるく」行いましょう。
「肥満や糖尿病の患者さんが糖質を食べてしまう大きな理由の一つは『ストレス』です。食事について考える余裕がないほど生活が多忙という人も多いです。ストレスを感じると脳でドーパミンが放出されますから、より糖質を求めるようになってしまう悪循環が生まれるのです」
と市川先生。頑張りすぎや我慢は続きませんから、ストレスをやり過ごす自分なりの対処法も見つけておきたいものです。2 週間続けば行動は習慣化していくそうです。まずは 2 週間続けることをめざして、無理なくできることから始めてみましょう。

PROFILE

main(sp)

教えてくださったのはこの方!

いちかわクリニック院長

市川壮一郎先生 (いちかわそういちろう)

千葉大学医学部を卒業後、循環器専門医として救急医療に邁進する中で、病気となってから受診するのではなく、その前に予防できればより多くの方が毎日を健やかに過ごすことができると確信。2018 年に生活習慣病を中心とした診療をするため千葉県船橋駅前に「いちかわクリニック」を開業。数多くの患者さんに食生活を含めた生活習慣の改善を行なっている。特に糖質制限については遠方からの受診を希望される患者さんも多く、糖質の摂り過ぎを無理なく是正することで、数多くの糖尿病患者さんの改善に成功している。著書に『ゆる糖質オフ そうだったのか食事術』(時事通信社)。