東急コミュニティー

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住人十色

暮らしをワンランクアップさせる日常のつくり方

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目次

料理やワイン、空間を自在にコーディネートし「おもてなしメソッド」を確立してきた食空間プロデューサー・山本侑貴子さん。その美学は住空間にとどまらず、書や水墨画といったアートの世界にも広がりを見せています。洗練された日常を築くその秘訣を、山本さんの美学に満ちたご自宅で伺いました。

「おもてなし」の原点
美しく整った空間で人を迎える

都心のマンションでご家族と暮らす山本さん。趣味として始めた料理やおもてなしが評判を呼び、テーブルコーディネートの魅力を伝えるサロン「dining & style」を自宅でスタート。現在はレッスンを別の場所で行っており、ご自宅は家族やお友だちと過ごすプライベートな空間となっています。

玄関から廊下を抜けて扉を開けると、卓越した美意識で整えられたリビング・ダイニングが広がります。SNSでもたびたび紹介されるこの空間には、山本さんのライフスタイルや価値観が映し出されています。

「意外と物が多いんです。でも、インテリアの色をモノトーンで統一しているからスッキリ見えるんです」

テーブルコーディネートの基本色である白・黒・ガラスを基調にしながら、大きな観葉植物や花が安らぎや華やかさを演出。
毎日を過ごす場所だからこそ「心地よさ」を大切にした丁寧な空間づくりを心がけているそうです。

①明るく開放的なリビング・ダイニングにはインテリア好きなご主人と少しずつ揃えてきた名作家具が。 ローテーブルは新婚当初に 「ザ・コンランショップ」で購入。リビングには「バルセロナチェア」や「ザノッタ」のソファでシックな雰囲気

②リビングを窓側から見た様子。扉の前に置かれた「エッグチェア」はご主人の定位置。
手前に見えるソファで過ごすひとときが山本さんにとって何よりの癒やしなのだとか。テレビ上の空間には何か手を加えたいと考えているそう

③使い勝手にこだわって設計したオーダーキッチン。カウンターの高さを調整し手元が見えにくくすることで生活感を抑えつつ、軽食 やワインタイムにもぴったりな空間に。夫婦でグラスを片手に何気ない会話を交わす時間もここで生まれる

愛着があるインテリアと暮らす
「自分の家だからこそ、心地よく」

クローゼットの8割がモノトーンで、特に黒の服が多いという山本さん。
その理由を尋ねると「私はホスト役で、ゲストを引き立てる黒子でいたいんです」と笑顔で語ります。
華やかに見えるテーブルコーディネートの裏には、重たい器や多くのアイテムを準備する地道な作業があり、プロとしての意識が感じられます。

 

そんな山本さんが長年愛用するのが「カッシーナ」のダイニングテーブルで、30年もの歳月をともにしてきました。「とにかく軽いんです。私1人で動かすことができる優れもので、このテーブルを超えるものに出会えていません」


ダイニングの椅子として揃えられた名作「セブンチェア」も、スタッキングできて扱いやすく、見た目だけでなく機能性を重視。


「今使っているもの以上の良いものがない限り買い替えない」というポリシーのもと、長く使い続けられる上質なものだけが残されています。


「暮らしの場だからこそ、本当に好きなものだけに囲まれていたい」という信念に満ちた空間が、静かな説得力を放っています。

① 玄関には山本さんが手がけた「凛」の書作品が飾られています。前衛書道で基礎を一通り学び、抽象的な表現を追求して創作されたもの。
  香道もたしなみ、香炉を添えて訪れるゲストをやわらかな香りで迎え入れます。

② 普段はテーブルクロスを敷かず、名作「アルコランプ」の真下に花瓶を置いて季節の花を楽しみます。リビングは2011年フローリングに改装。
  以前は白いカーペットでしたが、ワイン好きが集うホームパーティーでシミができやすいのであえて外してスッキリとした印象に。

年中行事とともに育まれたおもてなし
家族や友人とのかけがえのない時間

山本さんのもてなし上手は、お母さまの影響が大きいそうです。

「母は季節の行事を大切にし、人を招くのがとても上手でした。庭で育てたハーブでハーブティーを淹れ、ご近所の方とティータイムを楽しむような人なんです」

そんな母の背中を見て育った山本さんのおもてなしには、ゲストへの気遣いと喜ばせたいという想いが込められています。

「料理も器も好きですが、家族や友人がいなければ、ここまでこだわっていなかったかもしれません。『家のご飯が一番』と笑ってくれる家族や、褒めてくれる友人の存在が、私の原動力なんです」

おもてなしのテーマカラーや料理は、ゲストの顔を思い浮かべながら考えるのが山本さん流。そんな山本さんのおもてなし精神を、私たちが取り入れることはできるのでしょうか。

「もちろんです。最初は双方にとって負担のないアフタヌーンティーなどがおすすめです。顔が隠れない低い位置に生花を飾るだけでもテーブルは華やかになりますよ。私はワインが好きなのでいつも簡単なおつまみを用意するのですが、それだけでも立派なおもてなしです」

アートの世界にも広がる表現
「私らしさ」を求めて筆を走らせる

 著書をバイブルにする生徒がいる師の立場になっても、学ぶ姿勢を忘れない山本さん。「さまざまなことを学べば学ぶほど、もっと学びたいという気持ちになっています」

 

最近は水墨画や書道に夢中で、テーブルクロスに墨で絵を描き、手土産といっしょにプチギフトとして自作の水墨画を贈ることも。「大学時代の同級生が絵を描いていて、個展を開いたんです。彼女から刺激を受け、私もいつか個展をやってみたいという夢ができました」

 

「テーブルコーディネートも基礎を学んだ後は、『自分らしさ』を追求してきました。水墨画や書は試行錯誤の段階で、私らしさが確立できていませんが、筆を自由に走らせて自己表現する時間が何より楽しいんです」

 

「誰かに学ぶことも大切。でも、最終的に自分らしさを形にできるのは自分だけです」

 

「暮らしを楽しむ達人」である山本さんが大切にしているのは、「~しなければならない」という思い込みから自分を解き放ち、本当に好きなことを、自分のペースで続けること。それが、豊かでしなやかなライフスタイルを育む鍵なのかもしれません。

カウンター横に飾られた、写真家MARK VASSALLO(マーク・ヴァサーロ)による黒と白のコントラストが美しい一枚。チューリップの横顔を写したモノクロ作品が、空間全体を引き締め、アートとインテリアの心地よい余韻を演出します。

螺旋状に伸びるステムが特徴的なスガハラ(Sghr)のシャンパングラス。熟練の職人が手仕事で仕上げ温もりと緊張感が同居します。「好きなものこそ日常で使うべき」と話す山本さんは日々の食卓でもこのグラスを愛用しています。

HOYAがかつて製造していたクリスタルガラスのワイングラスは、結婚記念日のたびに一脚ずつ買い足してきた思い出のアイテムで、時間とともに育まれた物語が宿っています。美しい曲線と重厚な輝きが玄関の一角を彩るアートピースに。

まるでギャラリーのような玄関の正面には自身が書いた「光」の書が飾られています。風水師の友人のアドバイスで玄関正面に「光」を取り入れることにしたというこの作品は「凛」の書と共にゲストを優しく迎え入れます。

ワインエキスパートとしての知識と美しいものへのこだわりが反映されたワインセラー。ソムリエ・ドヌールの称号も持つ山本さんが選び抜いた銘柄や、贈り物としていただいたワインボトルが丁寧に収められています。

玄関ドアのそばに置かれたグローブ・トロッターは各地を旅してきた相棒のような存在。経年変化を楽しめるレザーの風合いと深い色合いが、静かに語りかけてくるようです。その上にも「真」の一文字をしたためた書が飾られています。

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1999年、自宅で始めた料理とテーブルコーディネートのサロンが好評を博し、2007年には「dining & style認定講座」を開講。以来、食空間プロデューサーとして活躍の幅を広げ、店舗や商品のプロデュース、航空会社ラウンジやTV番組の空間スタイリングなどを手がけてきました。近年ではその感性をアートの分野にも展開し、水墨画や書道といった新たな表現にも挑戦中。茶道や香道も長年たしなみ、今後は精進料理の学びを通じて日本文化の発信にも力を注いでいく予定。山本さんの感性がどのように発揮されるのか楽しみです。

①分野にとらわれず何事も積極的に学ぶ山本さん。その中で得た技術や精神に自分らしさを加え、山本さんならではおもてなしが完成する。

②全ては家族や友人を喜ばせたいという気持ちから。細やかな気遣いが光る美しいテーブルコーディネート。

③山本さんが描いた水墨画。基礎を習った後は、技を磨くだけでなく「楽しむこと」も大切にするのが山本さん流。

④お気に入りのテーブルで時には茶道を嗜むことも。様々なおもてなしの形にふれる機会を絶やさない。

MANSION DATA

間取り:2LDK
専有面積:120㎡
築年数:19年

料理やワイン、空間を自在にコーディネートする山本様のご自宅
120㎡の広々としたお部屋にはこだわりのアート作品も

PROFILE

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株式会社ダイニングアンドスタイル代表

食・空間プロデューサー


山本 侑貴子さん(やまもと ゆきこ)

株式会社ダイニングアンドスタイル代表/食空間プロデューサー/ワインエキスパート/ソムリエ・ドヌール/シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ

慶應義塾大学卒業後、外資系証券会社勤務を経て、テーブルコーディネートの道へ。2006年に株式会社ダイニングアンドスタイルを設立し、数々の企業・メディアと協業。2023年にはG7広島サミットのテーブルコーディネートにも関与。