東急コミュニティー

暮らしの窓 WEB

「暮らしの窓とは」

マンションのライフスタイルを彩る
様々な情報をお届けします。

ライフスタイル特集

見どころを知って建築巡りや街歩きを楽しもう!

名建築探訪

いつも歩いている街並みも建築やディテールに目を向けると新たな発見があるものです。今回は建築ガイドツアーを行なっているアーキエキスパートでもある、一級建築士の三村大介さんに、日本を代表する建築家が手がけた名建築の解説と見どころを教えていただきました。ぜひ街歩きを楽しむとき参考にしてください。まずは建築を見るときのポイントから。さあ、出発です。

まず自由に「!」を感じ、
その後「?」に思いを巡らせて。

建築物を見るときは、まず見たまま、感じたまま「!」という場所を探してみます。「色がきれい」「形が美しい」「居心地がいい」など、なんでもいいので五感をフル活用して「!」を感じてください。そして、次にそれについての「?」に思いを巡らせてみましょう。「どうしてこの色にしたのか」「なんでこんな形を思いつくのだろう」「天井が高いから居心地がいいのかな」といった具合に。建築家が作品を創造するというのは、この「?」を「!」に具現化することだと思うのです。そして、それが建築家のオリジナルティであり、作品としてのおもしろさやユニークさ、美しさにつながっていると思っています。今回は東京近辺の名建築を厳選してみました。ぜひ実際に見に行って「!」を感じ、「?」に思いを巡らせていただければと思います。

東京カテドラル聖マリア大聖堂

竣工年

1964年

設計者

丹下健三氏
代表作:国立代々木競技場第一・第二体育館、東京都庁、フジテレビ本社ビルなど

住所

東京都文京区関口3-16-15

アクセス

東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅1a出口より徒歩15分

WEBサイト

https://catholic-sekiguchi.jp/

日本近代主義建築の巨匠、丹下健三氏による教会で、建築の「強」=構造、「用」=機能、「美」=意匠を実に鮮やかに具現化した、まさに三位一体の傑作。外観は4種類2枚ずつのステンレスの鋼板が張られたHPシェル(双曲放物面を有した鉄筋コンクリート造の薄い板)によって構成されており、それらは隙間が設けられて立て掛けられている。実はこの隙間、内部空間に彩光をもたらすために設けられたのはもちろん、なんと上空から見ると十字架を形成している。禁欲的なコンクリート打放しの内壁や、神々しい光が降り注ぐトップライト、ステンドグラスの代わりに大理石を薄くスライスしたものがはめられている祭壇など、過度な造形や装飾が無くとも、また、特別な演出道具や機能が一切無くとも、建築そのものが教会としての崇高さや荘厳さを有している。

上空から見ると十字架にも見えるというアイデアに脱帽。さらに内部に入ると頭上から光が降り注ぎ、それはまるで「天使の梯子」のようです。ぜひこの神聖で荘厳な空間に浸ってみてください。

スパイラル

竣工年

1985年

設計者

槇 文彦氏
代表作:代官山ヒルサイドテラス、幕張メッセ、東京体育館など

住所

東京都港区南青山5-6-23

アクセス

東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道」駅B1出口より徒歩1分

WEBサイト

https://www.spiral.co.jp/

残念ながら昨年(2024年)亡くなられた槇文彦氏による複合文化施設。カフェやレストラン、生活雑貨のショップはもちろん、ギャラリーや多目的ホール、トータル・ビューティ・サロンまで、40年前の当時において、このようなハイブリッドな機能を持つ建築は、極めて斬新で画期的であった。大小さまざまな正方形や立方体に加え、曲面や逆L字の壁、円錐、円柱と、多種多様な幾何学図形がコラージュされたように組み合わされている建築はまさしく都会的。アルミパネルとガラスで構成されているファサードは、「螺旋=スパイラル」を連想させるようなデザイン。半径約9mの半円筒形のアトリウム(吹き抜け)に設けられた2階のショップへとつながるランプウェイは、「Spiral Garden」と呼ばれるエキシビジョンスペースとして多目的に使用される場所で、こちらは内部の「螺旋=スパイラル」となっている。

エントランスホールから2階にある「Spiral Market」へ、そして3階にある多目的ホール「Spiral Hall」のホワイエまでをつなぐ大階段=「エスプラナード」は、街並みを内包したかのような内部空間となっています。そこは独り時間を謳歌できる、まさにTOKYO的な場所です。

法隆寺宝物館

竣工年

1999年

設計者

谷口吉生氏
代表作:東京葛西臨海水族園、ニューヨーク近代美術館新館、鈴木大拙館など

住所

東京都台東区上野公園13-9

アクセス

JR線「上野」あるいは「鶯谷」駅より徒歩10分

開館時間

9時30分〜17時00分(毎週金・土曜日は~20:00)
※月曜日休館、ただし月曜が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館

WEBサイト

https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=119

惜しくも昨年(2024年)の年末に亡くなられた谷口吉生氏による建築。近代主義建築の正統な後継者ともいえる谷口氏だが、同じく東京国立博物館にある東洋館は、父である近代主義建築の巨匠・谷口吉郎氏が設計した建築で、1999年に法隆寺宝物館が開館し、親子共演が実現した。谷口吉生氏は、日本の建築家としては珍しく、主に美術館など公共施設を手がけ、「世界で最も美しい美術館をつくる建築家」と称されることも。いかにも谷口氏らしい垂直性と水平性が際立つ均整の取れた美しいファサードや、水盤と御影石敷きのアプローチ、アルミパネルの薄い屋根と細い柱、大きなガラス面を覆う和の雰囲気を思わせるアルミの縦格子など、無機質な素材を多用しつつ静寂、秩序、品格を感じさせる。

床や壁の目地、柱やエントランスの配置など精密機械が如くの厳格なディテールは必見。静かな環境に溶け込むようであり、また展示物と展示空間の崇高さを具現化したような佇まいです。この凛とした静謐さと緊張感を味わってみてください。

21_21 DESIGN SIGHT

竣工年

2007年

設計者

安藤忠雄氏
代表作:コレッツィオーネ、国際子ども図書館、表参道ヒルズなど

住所

東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン

アクセス

都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線「六本木」駅、
千代田線「乃木坂」駅より徒歩5分

WEBサイト

https://www.2121designsight.jp/

コンクリート打放しが代名詞ともいえる安藤忠雄氏には珍しく、地面に向かって傾斜し折り曲げられた巨大な鉄板の屋根が特徴的な意欲作。これはこのギャラリーの創立者である三宅一生氏の服づくりのコンセプト「一枚の布」から着想を得たもので、一枚の鉄板を、まるで布を折り曲げたような形状にした屋根が斬新かつ印象的。また、「背後に立ち並ぶヒマラヤ杉に、しっかりと包まれるように佇む建築をつくりたい」ということから、床面積の8割以上が地下に埋まっている。配置計画や内部空間などにも安藤忠雄氏の「必殺技」が随所に。日本最長の複層ガラスなど、世界屈指の技術も結集されている。

周辺環境に包まれるように佇む建築。地下に埋まった中に入ると、外観からは想像もよらない空間が広がっています。そこはまさしく安藤ワールド。コンクリート打放しと採光が創り出す美しい陰影をご堪能あれ。

根津美術館

竣工年

2009年

設計者

隈 研吾氏
代表作:浅草文化観光センター、国立競技場、角川武蔵野ミュージアムなど

住所

東京都港区南青山6-5-1

アクセス

東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道」駅A5出口より徒歩8分

WEBサイト

https://www.nezu-muse.or.jp/

しみじみとした情緒美と、知性的な感覚美を併せ持った建築。まず、正門から美術館エントランスへと続くアプローチは日本庭園の形式の1つである「露地」のようであり、道路の喧騒を遮断する竹の植え込み、和風住宅のような丸竹の壁、硯石のように見える石畳が作り出す空間はその静寂感とも相まった情緒美がある。一方で、軒先に鉄板を用いたシャープな切妻屋根には瓦葺きの鈍重さを感じさせない軽快さが。内部空間も外観の屋根の形をそのまま反映させた天井は庭園に向かって勾配し、内部と外部が連続したような一体感があってとても清々しく、その仕上げには薄く加工した竹を貼り付けたものを使っているのが、これまた明朗で知性的である。

日本の古典文学の表現である「あはれ」と「をかし」という側面を持った建築だと感じます。今風にいえば「エモい」建築でしょうか。ぜひ都会のど真ん中で「いとあはれ」「いとをかし」を感じてみてください。

すみだ北斎美術館

竣工年

2016年

設計者

妹島和世氏
代表作:ディオール表参道 、金沢21世紀美術館 、ルーブル・ランスなど

住所

東京都墨田区亀沢2-7-2

アクセス

都営地下鉄大江戸線「両国」駅A3出口より徒歩5分、
JR総武線「両国」駅東口より徒歩9分

WEBサイト

https://hokusai-museum.jp/

西沢立衛氏との建築家ユニットSANAAとして国際的な栄誉ある賞を多数受賞している妹島和世氏による設計。妹島氏の作品は、ユニークな曲線と大胆な空間構成、内と外が連続するような開放感が特徴。透明で白く浮遊感のあるものが多い中、この作品は鏡面のアルミパネルが建築全体を覆う鉱物の塊のような重量感のある特異作。この外壁に下町の風景が映り込み、見る角度によって表情が変化することで、周辺地域の風景に建築がやわらかく溶け込む。また、スリットによりゆるやかに分割された外観とすることで、周辺の下町市街地のスケールとの調和を図っている。このスリットは、地上階部分ではアプローチの空間となっており、外部通路となっているので、建物全体に「裏」をつくらず、周辺地域のどこからでもアクセスすることができるようになっている。

アルミの外観なのに風景がやわらかく映り込むことで冷たさを感じさせないユニークな建築です。建物全体として閉じながらも、スリット部分からは館内の様子が誰もが伺える、まさに妹島氏の真骨頂である公園や地域と一体となった美術館です。

Newsな建築

2024年に話題を集めた2建築もご紹介

今、話題を集めている名建築も教えていただきました。まず、建築界の最高峰ともいわれている「プリツカー賞」を、2024年に山本理顕氏が受賞。日本人でこの賞を受賞したのは9人目です。山本氏が手がけた横須賀美術館と、さらにもう一つ、こちらも昨年、原宿に誕生し注目されている東急プラザ原宿「ハラカド」。この2つについても三村さんに解説いただきました。

横須賀美術館

竣工年

2006年

設計者

山本理顕氏
代表作:埼玉県立大学、公立はこだて未来大学、天津図書館など

住所

神奈川県横須賀市鴨居4-1

アクセス

京浜急行線「馬堀海岸」駅 1番乗り場から京急バス「観音崎」行(須24、馬24)
「ラビスタ観音崎テラス・横須賀美術館前」(約10分)下車、徒歩2分

WEBサイト

https://www.yokosuka-moa.jp/

昨年(2024年)「建築界のノーベル賞」とも称されるプリツカー賞を受賞した山本理顕氏による「環境全体が美術館」をテーマとした美術館。「地形を利用して景観と建物とを一体化させる」ため、海側から見た時に背後の森への視線が抜けるよう、ボリュームの半分を地下に埋め、建築を低層化している。外側がガラス、内側が白い鉄板といった入れ子構造(ダブルスキン)からなるショーケースのようなファサードが特徴的。エントランスホールや吹抜の地階所蔵品展示ギャラリーでは、鉄板の天井や壁に丸穴を開けることで、光の分量や熱、視線をコントロールしている。

周囲の海や森と調和し、風景の一部になった開放的で美しい美術館です。室内の大小さまざまランダムに設けられた丸窓から見える海や船はまるで動く絵のようです。横須賀の美しい自然を違った視点で楽しむことができます。

東急プラザ原宿
「ハラカド」

写真提供:東急不動産

開業年

2024年

設計者

平田晃久氏
代表作:Sarugaku、 太田市美術館・図書館、ひと・まち・文化共創拠点ホントカ。など

住所

東京都渋谷区神宮前6-31-21

アクセス

東京メトロ千代田線・副都心線「明治神宮前」駅出口4または7より徒歩1分

WEBサイト

https://tokyu-plaza.com/harakado/

昨年(2024年)に表参道と明治通りが交差する神宮前交差点に開業した新商業施設。「多様な人々の感性を刺激する、新たな原宿カルチャーの創造・体験の場」をコンセプトに、新たな原宿カルチャーを生み出す個性豊かな75店舗が集結。地下には銭湯もある。三角形や四角形、また凸凹面とフラット面が混在するガラスを複雑に組み合わせながら、うねる多面体のようなファサードは、交差点を挟んで向かいに建つ東急プラザ表参道「オモカド」(設計:中村拓志氏)の多面体ミラーで覆われたトンネルのようなエントランスに呼応したデザインと思われる。

上層階の屋外には緑あふれる階段状のオープンスペースを提供。これも「オモカド」の森の中に現れた小さな庭のような屋上テラスに対して、森が切り拓かれた開放的で壮大な傾斜地に造られた広場のよう。ぜひこの2つを対比し、想像を巡らせながら、お互いの建築を眺めてみてください。

建築を知って、生活や人生をさらに豊かに。

建築の魅力は何といっても、どんな人でも必ず共通の話題になり得るということです。日々の生活や人生において、建築と関わらない人は皆無(それを意識するかしないかは別として)なのですから、自ずと建築は人々の生活や人生に大きく関わり、そしてさまざまな影響を与えるものなのです。ホッコリできる心地の良い空間を知っている、ワクワクする楽しい場所を知っている、心トキメク素敵な建築を知っているということは、それだけで生活や人生を豊かなものにしてくれるはずです。なので、ぜひ、そんな新しい刺激や発見を求めて、今までと違う視点や思考を持って建築作品巡りを楽しんでみてください。

建築ガイドツアーWEBサイト:
https://i-travel-square.tokyo/travel/japan/architecture/archtour/

PROFILE

教えてくださったのはこの方!

株式会社マロプラス 代表

三村 大介さん(みむら だいすけ)

石川県金沢市出身。一級建築士・一級建築施工管理技士。大阪大学大学院修士課程修了(建築工学専攻)後、東京工業大学工学部建築学科文部技官を経て、1998年に三村建築環境設計事務所設立。現在マロプラス代表。アーキエキスパートとして、各種建築系の資格取得の講座から、建築家と建築作品そして街を解説する建築ガイドの講座に至るまで、建築について多角的、全方位的に解説する講師も務める。

株式会社マロプラス

https://www.malo.co.jp

PROFILE

教えてくださったのは
この方!

株式会社マロプラス 代表

三村 大介さん
(みむら だいすけ)

石川県金沢市出身。一級建築士・一級建築施工管理技士。大阪大学大学院修士課程修了(建築工学専攻)後、東京工業大学工学部建築学科文部技官を経て、1998年に三村建築環境設計事務所設立。現在マロプラス代表。アーキエキスパートとして、各種建築系の資格取得の講座から、建築家と建築作品そして街を解説する建築ガイドの講座に至るまで、建築について多角的、全方位的に解説する講師も務める。

株式会社マロプラス
https://www.malo.co.jp