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ライフスタイル特集

料理のプロが教える

家庭料理の基本の「き」

家で料理をする際に、基本的な作業や手順で「あれ?」って、手が止まることはありませんか?
そこで、今さらきけない料理の基本について調理師専門学校の先生に教えていただきました。

「まずは包丁についてお話ししましょう」

包丁の選び方と正しい持ち方

家庭料理には三徳包丁とペティナイフの2種を用意

今回、料理の基本を教えてくださったのは、辻󠄀調理師専門学校の満園聖先生。
「料理の基本といいましても、プロの料理と家庭の料理とでは基本が異なります。たとえば、包丁は、家庭料理であれば三徳包丁(文化包丁)とペティナイフがあれば十分ですが、和のプロの場合は、刺身、出刃、薄刃の3本が最低限必要で、本校の授業でも、包丁を研ぐところからはじまります」

そもそも三徳包丁は、和包丁と洋包丁のいいとこ取りの包丁として家庭用に作られたものだそう。
「そして包丁の握り方ですが、ぎゅっと握るのも間違いではありませんが、親指と人差し指で刃をはさんで、それから他の3本の指を柄にそわせます。こう持つと力を入れずに切ることができますよ」

料理初心者の方へのアドバイスとしては、
「そうですね、まずはレシピに忠実に作ってみることでしょうか。最初からアレンジしないで、まずはレシピ通りに作ってみる。それから自分の好みに合わせて味を調整していく方がいいと思います」

【家庭用包丁】

「家庭では三徳包丁(写真上)とペティナイフ(写真下)があれば基本的な料理は可能だと思いますよ」と満園先生。

【プロ仕様包丁】

料理人は3種の包丁を使い分けるそうで、写真上から順に、刺身包丁、出刃包丁、薄刃包丁。これらの包丁は毎日研ぐ必要もあり、手入れが大変です。

【包丁の持ち方】

①親指と人差し指で包丁の刃(柄に近い部分)を摘むように持ちます。
②包丁の柄に中指、薬指、小指をそわせるように握ります。

【包丁の置き方】

包丁は刃を自分と反対向きにして、できればまな板の奥に置きましょう。

「野菜それぞれの繊維を意識して切ることが大事です」

野菜の切り方

野菜の繊維に対してどう切るか
それで仕上がりが変わります

野菜の切り方については、
「それぞれ繊維の方向を意識して切ることが大事です。たとえば、繊維にそったキャベツのせん切りはシャキッとした仕上がりになります。野菜に対して包丁を真下に下ろすように切るのではなく、向こう側に押す、または手前に引くようにして切りましょう。そうすると繊維が潰れず、野菜の断面もつるっとして食感がよくなりますよ」

そして、代表的な野菜の切り方を16種類教えていただきました。
「そもそも日本料理は『切る』作業に重きをおいている料理なんです。ご家庭でも煮物の場合、煮くずれを防ぐ面とりや、箸で切りやすくするための切り込みなどの一手間を加えると仕上がりがよくなりますので、ぜひやってみてください」

【輪切り】

きゅうり、大根、にんじんなどの切り口が輪になる野菜を、そのまま円形になるように一定の幅で切る。

【短冊切り】

長さ4~5cmくらいの直方体に切ってから、野菜の繊維にそって長方形に薄く切る。

【さいのめ切り】

さいころのように、約1cm角の立方体に切る。

【乱切り】

ごぼう、にんじん、なすなどの円筒形の野菜の端を切り、手で野菜を回転させて切り口が上になるようにして斜めに切る。

【半月切り】

きゅうり、大根、にんじんなどの切り口が輪になる野菜を、縦半分に切ってから、輪切りと同様に一定の幅で切る。

【拍子木切り】

長さ4~5cmくらいの直方体に切ってから、野菜の繊維にそって0.5~1cmの棒状に切る。

【あられ切り】

さいのめ切りよりもさらに小さく、3~5mm角の立方体に切る。

【笹がき】

ごぼうやうどなど長細い野菜を、鉛筆を削るように端から薄くそぎ切る。野菜をまな板に置き、片手で軽く転がしながら切る。材料が太い場合は、縦に切り込みを入れてから切ると細くなる。

【いちょう切り】

きゅうり、大根、にんじんなどの切り口が輪になる野菜を、縦4等分に切り、いちょうの葉のような形に一定の幅で切る。

【千六本】

せん切りの一種で、せん切りよりも太めに切る。2~3mmを目安に繊維にそって切る。

【みじん切り】

せん切りにした野菜を、同じ幅で細かく切る。また三つ葉などの軸をそのまま細かく刻む。粗めに切る場合は「粗みじん」という。

【くし形切り】

丸いもの(食材)を放射状に均等に切る。レモンの場合は、まず両端を切り、くし形に切って、切れ端に残る白いわたも切り落とし、種を取り除く。さらに果実部分に切り目を入れるとレモン汁が飛び散りにくくなる。

【色紙切り】

正方形の棒状に野菜を切ってから、一定の幅で切る。

【せん切り】

千六本よりさらに細く、繊維にそって1~2mmに切る。さらに細く切るものを「針切り」という。

【斜め切り】

きゅうり、長ねぎ、ごぼうなどの細長い野菜を端から一定の幅で斜めに切る。

【面とり】

野菜が煮くずれしないように、切った野菜の角の部分を薄くむきとる。比較的大きめに切った野菜に用いる切り方。

「『さしすせそ』は少し前の常識。砂糖と塩の順番だけ覚えておきましょう」

調味料のはかり方

固体の調味料はすり切りを
液体は水面が盛り上がるまでが一杯

「調味料には固体のものと液体のものがありますけど、計量スプーンではかる場合、固体はすり切り、液体は表面張力で盛り上がった状態をそれぞれ一杯とします。大さじが15ml、小さじが5mlと覚えておいてください」

砂糖と塩を入れる順番は、
「必ず砂糖が先です。なぜなら分子量の大きさが砂糖の方が大きいので、塩を先に入れてしまうと、砂糖が入っていかなくなってしまうのです。昔は『さしすせそ』の順番でといわれてましたけど、砂糖と塩の順番と、味噌は風味が飛ぶから最後に、そのくらい覚えておけばいいと思います。あとは、標準の計量カップ(200ml)とお米用の1合カップ(180ml)の容量の違いも間違えやすいので注意してください」

【液体調味料のはかり方】

酢、しょうゆなどの液体の調味料は、大さじまたは小さじに入れて、表面張力で盛り上がる状態を一杯として計量します。たくさんはかるときは計量カップを使ってください。

【固体調味料のはかり方】

砂糖、塩などの固体の調味料は、大さじまたは小さじですくい、山盛りの部分をスプーンの柄などを使ってすり切りをして計量します。

調味料をすくう

調味料をすくう

スプーンの柄を横にスライド

スプーンの柄を横にスライド

平面になるようにすり切りする

平面になるようにすり切りする

少々やひとつまみの目安

レシピなどでよく見かける、「少々」や「ひとつまみ」は、計量スプーンでははかれない分量を表しています。目安としては、少々は、親指と人差し指の2本の指でつまんだ量、ひとつまみは、親指と人差し指と中指の3本の指でつまんだ量です。

「火加減は、鍋の中の表情を見ながら操るのが一番大事なことです」

火加減について

ガスかIHかでも違いがあるので
火加減は鍋の中を見ながら調整を

火加減については、
「調理中の火加減調整は、鍋の大きさや熱伝導率によって変わってくるので、あくまでも目安ですけれど、鍋底一面に火があたっているのが強火で、鍋底にあたっていないのが弱火、中火はその中間ですね。私は授業でいつも学生に『火加減よりも鍋の中の状態を見なさい』と言うんです」

また、強火の場合、鍋の横に炎がはみ出すのはNGだそうです。
「たとえば『ことこと』は、鍋の中が1、2カ所沸いている状態、大根をじっくり煮含めるときがそれですね。また、『ぐらぐら』はほうれん草を茹でているときなど、というように、鍋の中の表情を見ながら火加減を操るようにすれば自然と料理上手になるのではないでしょうか」

【強火】

鍋底全体に火があたっている状態。ただし、鍋底からはみ出さないように。

【中火】

強火と弱火の中間くらいの火加減。

【弱火】

鍋底に火があたらない程度の火加減。

IHクッキングヒーターの場合

IHの場合、メーカーによっても火加減が異なりますが、基本的には、1~3=弱火、4~6=中火、7~9=強火というのを目安に。

「毎日だしを引くのは大変なので、余裕のあるときにやってみてください」

だしの引き方

家庭料理であれば昆布だしや煮干しを使っただしもおすすめ

日本料理にとって最も基本のだしについても教えていただきました。
「だしは大事ですけれど、家庭料理の場合、毎日、毎食だしを引くのは大変ですよね。なので、市販のだしを使ってもいいと私は思っているんです。たとえば『今日はちょっと頑張ってみよう』っていうときは、お吸物のだしを引いてみる、そういう感覚でいいのでは」とおっしゃいます。そして、
「料理人は基本的に昆布とかつお節のだしを使いますが、家庭料理の場合は、昆布だしや煮干しのだしもいいと思います。今回ご紹介している分量は、ご家庭向きです。負担にならない程度にぜひやってみてください」

料理は楽しく、それが何よりの基本ということかもしれません。

◆基本のだし◆

【昆布とかつお節で引くだし】

和食メニューのほとんどに使えるだしです。

昆布を水に入れる。
水:1リットル
昆布:10g

昆布と水が入った鍋を弱火にかける。
※沸騰させないように気をつける
※15~20分を目安に

昆布を取り出す。だしをひと煮立ちさせる。

火を止めて、かつお節を加える。
かつお節:15g

かつお節が沈んだら、こす。
※ざるにキッチンペーパーをかぶせておく
※かつお節が沈むのは20秒程度なので素早く
※かつお節をかき混ぜると濁ってしまうのでかき混ぜはNG

【昆布で引くだし】

鍋物やふろふき大根、豚汁などに使えるだしです。

昆布を水に入れる。
水:1リットル
昆布:10g

昆布と水が入った鍋を弱火にかける。
※沸騰させないように気をつける
※15~20分を目安に

昆布を取り出す。

【煮干しと昆布で引くだし】

うどん、味噌汁、炊き込みごはんなどに使えるだしです。

煮干しと昆布を水につけておく。
水:1リットル
煮干し:40g
昆布:5g
※7~8時間程度つけておく

キッチンペーパーをかぶせたざるでこす。
※コクのあるだしがお好みの場合は一度沸かしてからこしてもOK

一晩水につけておくだけの昆布だし

1リットルの水に10gの昆布をつけておくだけでも昆布だしが引けます。つけておく時間は、1晩(7~8時間程度)を目安に。ラップをして必ず冷蔵庫に入れておいてください。

家庭料理は負担にならないことが一番だと私は思っています。
何かと忙しいところに無理をして料理をすることはありません。
「ちょっと頑張ってみよう」
「特別な日だから、もっとおいしく作ろう」というときに、
いつもより丁寧に野菜を切ったり、だしを引いたり、
できる範囲でやってみてください。

PROFILE

辻󠄀調理師専門学校 日本料理教員

満園 聖先生(みつぞの きよし)

福岡県出身 1984年 辻󠄀調理師専門学校卒業後、入職。在カナダ日本大使館にて公邸料理人を務めたこともある。TV「どっちの料理ショー」「二人の食卓」などメディア出演・協力多数。

辻󠄀調理師専門学校

1960年大阪に「辻󠄀調理師学校」として創設。食のプロを育成する日本最大の「食」の総合教育機関で、大阪、東京、フランス・リヨンに学校を展開。これまでに14万人以上の卒業生を輩出し、その多くはスターシェフや一流パティシエとして日本や世界各国で活躍しています。創設者である辻󠄀静雄(1933-1993年)は教育者として厨房に立つ傍ら、ヨーロッパなどの一流シェフたちと親交を結び、海外文献に基づいた料理研究も手がけました。その理念を受け継ぎ、辻󠄀調グループでは食文化の発展につながる活動にも注力しています。

【辻󠄀調グループ】

辻󠄀調理師専門学校/辻󠄀製菓専門学校/エコール 辻󠄀 大阪/エコール 辻󠄀 東京/辻󠄀調グループフランス校

【本 部】

〒545-0053 大阪市阿倍野区松崎町3-16-11

【代表者】

辻󠄀 芳樹

【創 立】

1960 年

【専属の教職員】

500 名

【グループ学生総数】

2,500 名

https://www.tsuji.ac.jp/

PROFILE

辻󠄀調理師専門学校
日本料理教員

満園 聖先生
(みつぞの きよし)

福岡県出身 1984年 辻󠄀調理師専門学校卒業後、入職。在カナダ日本大使館にて公邸料理人を務めたこともある。TV「どっちの料理ショー」「二人の食卓」などメディア出演・協力多数。

辻󠄀調理師専門学校

1960年大阪に「辻󠄀調理師学校」として創設。食のプロを育成する日本最大の「食」の総合教育機関で、大阪、東京、フランス・リヨンに学校を展開。これまでに14万人以上の卒業生を輩出し、その多くはスターシェフや一流パティシエとして日本や世界各国で活躍しています。創設者である辻󠄀静雄(1933-1993年)は教育者として厨房に立つ傍ら、ヨーロッパなどの一流シェフたちと親交を結び、海外文献に基づいた料理研究も手がけました。その理念を受け継ぎ、辻󠄀調グループでは食文化の発展につながる活動にも注力しています。

【辻󠄀調グループ】

辻󠄀調理師専門学校/辻󠄀製菓専門学校/エコール 辻󠄀 大阪/エコール 辻󠄀 東京/辻󠄀調グループフランス校

【本 部】

〒545-0053 大阪市阿倍野区松崎町3-16-11

【代表者】

辻󠄀 芳樹

【創 立】

1960 年

【専属の教職員】

500 名

【グループ学生総数】

2,500 名

https://www.tsuji.ac.jp/