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季節の変わり目こそ 睡眠の質を底上げしよう

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目次

寝苦しい暑さのピークが過ぎても、夏の終わりから秋にかけて寒暖差などで自律神経が乱れ、眠りにくくなる人も。

気温・日照が変化する季節の変わり目こそ〝睡眠ファースト〟で生活を整えるチャンスです。睡眠の質を高めるための工夫をご紹介します。

■季節の変わり目に眠れなくなるのはなぜ?

私たち人間だけでなく、地球上に存在する生物にはサーカディアンリズム(概日リズム)と呼ばれる「体内時計」が備わっています。人間のサーカディアンリズムは24時間より少し長いことが知られていますが、この体内時計のリズムに基づいて、夜になると眠くなり、朝になると目覚めるという睡眠のリズムも刻まれています。また、これには自律神経の安定に関わるセロトニンという神経伝達物質や、メラトニンという睡眠ホルモンも大きく関わっています。

 

朝、太陽光などの強い光を浴びることで体内時計のズレがリセットされます。この光の刺激がシグナルとなり、メラトニンの分泌がストップし、交感神経優位な活動状態へと移行しやすくなります。一方、セロトニンの分泌は太陽光を感知して増加します。これが時間をかけてメラトニンをつくるための材料になっていき、夜になるとメラトニンに変換され、眠気を促します。質の高い睡眠やすっきりとした目覚めを得るためには、このサイクルの中で体内時計を調整しやすいリズムを心がけることが重要です。

出典:白濱龍太郎『熟睡法ベスト101』(アスコム)

体内時計は1日の変動だけでなく、季節の移り変わりにも影響を受けています。特に日々の気温や気圧の変化が大きく、日中と夜の寒暖差も大きくなりがちな季節の変わり目は、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが乱れがちです。私たちの体では、体温、血圧、心拍、発汗など体の機能を維持するために、つねに自律神経が働いて調整しているのですが、気温や湿度など環境の変動が大きいと、急激な変化に頻繁に対応し続けなければならず、負担が増えるからです。

 

また、秋から冬にかけて日照時間が減ることも睡眠に影響を与えます。日照時間が短いとメラトニン分泌が早く始まり、止まるのは遅くなり、睡眠時間が長くなると考えられます。

このように、環境の変化に合わせて睡眠の状態も日々変化するのですが、本来のリズムに逆らうような生活スタイルを続けていると、眠りが浅くなったり、夜中に目が覚めやすくなるなど睡眠の質が悪化することもあります。

■環境の変動が大きい季節の変わり目は睡眠の質を上げるチャンス

環境が変動する時期だからこそ、それに合わせて生活習慣を意識的に整えることで、自分のライフスタイルに合うよい方法を見つけるチャンスです。仕事や家事よりも優先的に睡眠時間を確保する「睡眠ファースト」の考え方で、1日のリズムを見直してみましょう。

さらに、健康的な生活リズムを毎日繰り返すことが大切です。週末も基本的には平日と同じ時間に寝て、同じ時間に起きるのが望ましく、寝だめは生活リズムを狂わせ、「社会的時差ボケ」を引き起こします。いつもより多少長めに寝るとしても1〜2時間以内にとどめましょう。

■快眠のカギは自律神経と深部体温

睡眠の質を大きく左右するのは、「眠りについてから4時間以内に深い睡眠が取れたか」ということです。眠りについてから朝までに、「レム睡眠」(体は休んでいても脳が活発に動いている浅い睡眠)と「ノンレム睡眠」(脳と体の両方が休んでいる深い睡眠)のサイクルが4〜5回ほど繰り返されますが、このうち最初と2番目のノンレム睡眠に最も深い睡眠が得られやすいからです。

深い睡眠を得るために意識したいのは、①副交感神経を優位にすること、②深部体温の変動の2つです。

日中活動しているときは交感神経が優位に、夕方からリラックスして眠りにつくためには副交感神経が優位になるはずですが、自律神経のバランスが乱れていると切り替えがうまくいかず、交感神経が活性化したままになります。すると体は緊張し、深い睡眠につながりません。また、夕方以降は深部体温(内臓など体の深い部分の温度)が下がっていき、やがて眠くなるという仕組みが備わっているのですが、このリズムが狂うと質の良い睡眠が取りにくくなります。以下にご紹介する工夫を実践してみてください。

出典:白濱龍太郎『熟睡法ベスト101』(アスコム)

■快眠法① 睡眠環境を整える

・室温管理に気を配る

エアコンはつけっぱなしで温度を一定にする方が快眠を助けます。睡眠中は深部体温が下がるため、日中の設定温度より1〜2℃上げるのがおすすめ。

・照明は暖色系にしてリラックス

一般的にリラックスできる色は暖かみのあるオレンジ系とされています。また、メラトニンは暗くなってくると分泌が始まるため、夕方から夜は部屋の照明を暖色系かつ暗めにして、睡眠中は真っ暗にするのがおすすめ。軽いストレッチやリラックスできる音楽を聴くなど、自分なりの入眠儀式をパターン化して定着させることも大切です。

・寝るときにジャージや靴下は避ける

就寝用の衣服は吸湿性と伸縮性を備え、眠るために作られたパジャマを着用しましょう。厚手のジャージやスウェットは寝返りが打ちにくく睡眠用としては不向きです。また、吸湿性の高い素材で夏でも長袖長ズボンを着る方が汗を吸ってくれて快適な睡眠につながるでしょう。靴下を履いて寝ると足から熱が放散されにくく、快眠の妨げになります。冬場でも布団に入る前には裸足になりましょう。

・体に合うマット、枕を選ぼう

背中から腰にかけてフィットし、力が抜けるマットを選びましょう。柔らかすぎても硬すぎても体の負担になります。枕は首の骨から肩にかけてS字カーブが自然に保てるもの、寝返りを打った時に落ちないように横幅は頭3つ分くらいあるものがベターです。

・寝る向きでいびき、無呼吸を改善

寝ているときは全身の筋肉が緩みますが、仰向けの姿勢は舌周辺が緩んで喉の方へ落ち、気道が狭くなりがちです。狭くなった気道を空気が通る音がいびきになります。いびきが気になる人は横向きに寝る方が、舌が落ちにくくおすすめです。いびきに無呼吸が合併している場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性があるため、睡眠外来などに相談をしましょう。

■快眠法② 寝る前の過ごし方

・寝る1時間半から2時間前に入浴

深部体温が下がると眠気が起こるため、就寝時刻から逆算して1時間半から2時間前に入浴し、体を温めるとスムーズに入眠しやすくなります。ぬるめのお湯に10分以上浸かるか、シャワーで首の後ろに熱めのお湯を10分程度当て続け、深部体温の上昇を促しましょう。

・夜遅い食事は健康リスクを高める

寝る直前の食事は、血糖値を下げるために分泌されるインスリンの働きで交感神経が刺激され、睡眠を妨げます。そのうえ、食事が消化されないうちに眠りにつくと、中性脂肪も溜め込まれてしまい、あらゆる健康リスクも高まります。22時以降のドカ食いは避けましょう。

・寝る前の水分の摂りすぎはNG

寝る直前の水分摂取はトイレが近くなるため安眠の妨げに。夕食時に水分を摂り、寝る前にはトイレで用を足してから布団に入りましょう。特にアルコールは利尿作用があり、交感神経を刺激して休息しづらくなるため極力避けたいものです。

・激しい運動は20時ごろまで、寝る直前はストレッチ程度に

夕方から20時ごろまでに筋力トレーニングを行うと、成長ホルモンが分泌され、寝入りばなのノンレム睡眠の際に分泌される成長ホルモンと相まって睡眠中に筋肉が修復・増強しやすいとされています。ただし、寝る直前の筋トレは交感神経が活発になり寝つきが悪くなるなど逆効果です。寝る直前はストレッチ程度にとどめ、リラックスを心がけましょう。

■快眠法③ 朝の過ごし方

・太陽光は覚醒のスイッチ

朝、眠気を覚まし、体内時計のズレをリセットするためには太陽光などの強い光を浴びることが最も重要です。光を浴びることがシグナルとなってメラトニンの分泌がストップし、交感神経が活性化しますので、目覚めたらすぐにカーテンを開けて太陽光を浴びるようにしましょう。可能なら朝のうちに15分程度の散歩など太陽光を浴びながら軽い運動をするとセロトニンが分泌されやすくなります。

・柑橘系の香りを利用する

レモン、グレープフルーツなど柑橘系の香りは交感神経を刺激してスッキリした目覚めを促します。アロマオイルをディフューザーで広げてもよいですし、朝食で柑橘を食べるのもよいでしょう。

・朝食でトリプトファンを摂取しよう

必須アミノ酸の一つ、トリプトファンは体内でセロトニンに変わり、酵素の働きによって睡眠ホルモンであるメラトニンに変換されます。朝食でトリプトファンを多く含む食品(納豆、味噌などの大豆製品、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、卵、ナッツ類など)を食べましょう。

■快眠法④ 日中の過ごし方

・昼寝を上手に活用すると脳は劇的に回復する

13時ごろから遅くとも15時までに15〜20分程度の短い昼寝をすると、休養と集中力アップに効果的です。コーヒーを飲んでから昼寝をすると、香りのリラックス効果で眠りにつきやすく、20〜30分後にカフェインの覚醒効果が効き始めることでスッキリと目覚めやすいでしょう。

・昼食メニューを見直して午後の眠気対策

24時間のうち眠気には強弱のリズムがあり、そのピークは昼過ぎと深夜の2回。昼食後に眠くなる理由の一つは、体の自然なリズムによるものです。もう一つは、食事で上がった血糖値を下げるためにインスリンというホルモンが分泌されるからです。炭水化物(糖質)中心の昼食は血糖値を急激に上げやすく、インスリンが大量に分泌され眠気に襲われやすくなります。タンパク質や野菜を食べるように意識しましょう。

・眠気覚ましのコーヒーはホットで

コーヒーが眠気覚ましに飲まれるのは、カフェインがアデノシンという睡眠物質の働きを一時的にブロックし、覚醒効果をもたらすからです。アイスコーヒーよりホットコーヒーの方がカフェインの含有量が多く、血中濃度が最大になるまでの時間も早いため、眠気覚ましの効果を期待するならホットコーヒーがおすすめです。

参考文献:白濱龍太郎『熟睡法ベスト101』(アスコム)

PROFILE

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教えてくださったのはこの方!

医療法人RESM理事長・慶應義塾大学先端科学技術研究センター訪問教授

白濱 龍太郎

筑波大学医学群医学類卒業、東京医科歯科大学大学院統合呼吸器学修了(医学博士)。東京共済病院呼吸器内科、東京医科歯科大学(現東京科学大学)呼吸器内科、同大学医歯学総合研究科呼吸睡眠制御学で、臨床研究教育に従事後、公立総合病院で睡眠センター設立、運営。2013年より順天堂大学医学部公衆衛生学にて、睡眠呼吸障害と合併症や交通事故への影響に関する研究に従事。2014年経済産業省海外支援プログラムに参加。2018年ハーバード公衆衛生大学院客員研究員、2020年日本オリンピック委員会医科学強化スタッフ、2021年東京オリンピック選手用医師を兼任・歴任。現在、慶應義塾大学先端科学技術研究センター訪問教授、順天堂大学医学部客員准教授、国立大学法人福井大学医学部地域医療推進講座客員准教授などを兼任。